「治療・除痛」宣言

  • 整骨院を開業することができる資格を柔道整復師といいます。
    その柔道整復師を養成する大学や専門学校の数が小泉改革(規制緩和)により、飛躍的に増えました。
    この20年程で整骨院の数が急激に増えたのはそのせいです。

    急激に増えればレベルが下がるのは当然です。
    それに加え、長引く不況により健康保険を取り巻く財政状況は悪化し、柔道整復師が取り扱える健康保険の範囲も年々厳しくなってきています。
    現状は減っていくパイをより多くの整骨院が取り合っている状況です。

    そうした中、リラクゼーションや美容など本来の治療行為とはかけ離れたところに力を入れている整骨院が多く見受けられます。
    厳しい経営環境の中で生き残り、整骨院を維持していくためには、時代の変化に対応し、ニーズのある仕事や現金収入の見込めそうな仕事をすることは必然的なことかもしれません。
    私もこれを否定するものではありませんが、何か違和感を感じるのです。


  • 私の父も柔道整復師でした。
    学校から帰ると自宅の治療室が私の遊び場でした。
    半世紀も前のことですから、整骨院はおろか整形外科も少なく、父は骨折や脱臼の患者さんを毎日のように診ていました。
    骨折した患者さんが救急車で我が家に運び込まれることさえありました。

    ある日、小学生の女の子が手首を骨折をし、近くの病院で診てもらっていたのですが、経過を診るためにギプスを外したところ、歪んで引っ付いていたのです。
    その子のお父さんはあわてて、私の父のところへ女の子を連れてきて、「娘の手を何とかまっすぐな手になおしてください。」と懇願しているのです。
    「今より悪くなることはないが、まっすぐに治る保証はできない。」と父が答えると、女の子のお父さんは「それでもかまいません。お願いします。お願いします。」と藁にもすがる様子でした。
    結局父はこの申し出を受け入れ、私に言いました。
    「いいか、これからこの子が痛がって暴れないように、この子の両肩をしっかりと押さえつけておけ。」そういって女の子の口にタオルを噛ませ、なんとその子の手首をもう一度折り直したのです。

    幸いにも、その子の手首はまっすぐに治りました。
    その時の親御さんの喜びようは忘れることができません。
    勿論、現在こんなことをすれば大問題です。当時としても違法行為です。
    しかしこの様な経験があるからこそ、整骨院でリラクゼーションや美容に力を入れることに私が違和感を感じているのではないかと思うのです。
     
    柔道整復師になって30有余年。
    その間、整骨院の経営環境は悪化する一方です。
    私も他院も試行錯誤の日々です。
    しかし私はここでもう一度原点に立ち帰り、治療・除痛(治すこと・痛みを取ること)に徹底してこだわることを宣言します。

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